Naoto Fukasawa Design

German Design Award
Personality of the Year 2026
Naoto Fukasawa

February 8th, 2026
審査員講評:

German Design Awards審査員団は、複雑なデザイン課題を本質へと導く卓越した洞察力と、洗練されたシンプルな表現によって現代デザインを再定義してきた功績を称え、深澤直人を「Personality of the Year 2026」に選出しました。

深澤直人は、日常生活を静かに、しかし確かに変えていく独自のデザイン哲学を築いてきました。彼が提唱する「Without Thought(無意識)」の概念は、人の自然な行動や所作に溶け込むプロダクトのあり方を示しています。直感的な動きやふるまいを丹念に観察することで生み出されるその造形は、初めて触れた瞬間から自然に受け入れられ、説明を必要としません。そこには、人ともの、そして環境との関係性を深く見つめる姿勢が一貫して貫かれています。

Alessi、無印良品、B&B Italia、Herman Millerといった国際的ブランドとの数々の協働は、この哲学が国や文化を超えて広く共感を得ていることを示しています。なかでも、無印良品の壁掛式CDプレーヤーは、深澤のアプローチを象徴する存在として知られています。機能的で親しみやすく、静かな表情をたたえたこのプロダクトは、過去数十年において最も影響力のあるプロダクトデザインの一つと評価されています。

深澤のデザインには、常に意図された引き算があります。流行や装飾性に左右されることなく、耐久性や素材の特性を活かした使い方、そして的確で無理のない機能性を重視するその姿勢は、感覚が過剰に刺激され、急速な技術革新や短い製品寿命が常態化する現代において、シンプルであり続けること、そして持続性や資源への配慮の価値を静かに浮かび上がらせています。

また深澤は、日本の伝統的な感性と現代の工業デザインを結びつけ、その双方を自然に融合させてきました。彼のプロダクトは、地に足のついた洗練を備えながら、誰にとっても親しみやすい存在となっています。ジャスパー・モリソンとともに企画した展覧会「Super Normal」は、こうした視点を明確に示し、国際的なデザインコミュニティに共有されました。

深澤直人の貢献は、単なる造形表現にとどまりません。デザインが人の行動を導き、日々の体験を豊かにし、社会のあり方にまで影響を与え得ることを、彼はその実践を通じて示してきました。その姿勢は、私たちがものや環境とどのような関係を築くべきかを、あらためて問いかけています。

German Design Award 2026は、深澤直人の明快さ、感受性、そして揺るぎないデザインへの誠実さを高く評価しました。彼のデザインは、声高に主張することなく、しかし確かに日常に影響を与え、「良いデザインとは、注目を集めることで人を動かすのではなく、使う人の行動や意識が自然と導かれていくものである」という未来像を静かに提示しています。